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24時間、週に7日。妻であり、母であるわたしの雑感。

おかあさんだからって

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大人気だったドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」、通称・「逃げ恥」が放映されたおかげで「呪い」というキーワードが随分浸透してきたように思う。
ここで言う「呪い」とは、常識や「こうあるべき」と言った世間が押し付けてくるプレッシャーのこと。いつの間にかソレが「当たり前」として自分に刷り込まれていること。たくさんあるよね。

大人になったら結婚する
結婚して家庭を持って一人前
結婚したら子どもを作る
男は男らしく、女は女らしく…

そういうのから、もう自由になっていいんじゃないですか、逃げちゃいましょうよ、というのが「逃げ恥」のメッセージだったし、そこが多くの人に受け入れられて支持されて、恋ダンスと共に流行ったのだと思っていたんだけど。

今、ツイッターの育児クラスタに属するおかあさん達が揺れている。圧倒的な人気を誇る「だいすけお兄さん」の新曲が、あまりにも微妙なためだ。
あまりに限定されたクラスタにしか通じない話なので補足すると、「だいすけお兄さん」とは横山だいすけさん、昨年の3月まで9年間にわたってEテレおかあさんといっしょ」の歌のお兄さんを務めてこられた方。
爽やかなルックスとたしかな歌唱力、そしてコミカルでお茶目な面も持ち合わせ、幼児がいる家庭のお母さん達からはとても、とても人気がある。(その人気は「おかあさんといっしょ」を降板する際に「だいすけロス」という言葉を生み、その後CMやバラエティでも活躍するように。欽ちゃんの仮装大賞にも審査員として出演していた!)

そんな、お母さん達のアイドルが最新曲を披露した。Huluでもっている看板番組「だい!だい!だいすけおにいさん」でである。

以下、引用

あたしおかあさんだから

一人暮らししてたの おかあさんになるまえ
ヒールはいて ネイルして
立派に働けるって 強がってた

今は爪切るわ 子供と遊ぶため
走れる服着るの パートいくから
あたし おかあさんだから

あたし おかあさんだから
眠いまま朝5時に起きるの
あたし おかあさんだから
大好きなおかずあげるの
あたし おかあさんだから
新幹線の名前覚えるの
あたし おかあさんだから
あたしよりあなたの事ばかり

あたし おかあさんだから
あたし おかあさんだから

痩せてたのよ おかあさんになるまえ
好きな事して 好きなもの買って
考えるのは自分の事ばかり

今は服もご飯も 全部子供ばっかり
甘いカレーライス作って
テレビも子供がみたいもの
あたし おかあさんだから

あたし おかあさんだから
苦手なお料理頑張るの
あたし おかあさんだから
こんなに怒れるの
あたし おかあさんだから
いいおかあさんでいようって頑張るの
あたし おかあさんだからの
あたしより あなたの事ばかり

あたし おかあさんだから
あたし おかあさんだから

もしも おかあさんになる前に
戻れたなら 夜中に遊ぶわ
ライブに行くの 自分のために服買うの

それ ぜーんぶやめて
いま、あたしおかあさん

それ全部より おかあさんになれてよかった

あたし おかあさんになれてよかった
あたし おかあさんになれてよかった
あたし おかあさんになれてよかった

だって あなたにあえたから

恐ろしい、呪いの歌のできあがり。ゾゾゾ…だ。

この歌詞で歌われていることは、たしかにどれも思い当たることばかり。ケーキの上のイチゴは子どものものになったし、大好きだった買い物も今は子どものものばかり見ている。何かを捨てたり、我慢したり、諦めたりはもちろんある。そうだよね、そうなんだけど…。

多くのことを犠牲にすることを「おかあさんだから」と当然のようには言って欲しくないし、「いいおかあさんになるの」「いいおかあさんでいようって頑張るの」と、我慢は美徳で犠牲を払うのが「いいおかあさん」だと勝手に「いいお母さん」像を作らないで欲しい。わたし達に呪いを、かけないで欲しい。

この歌詞の作詞は絵本作家ののぶみさん。代表作は「ママがおばけになっちゃった!」…なるほど、これで納得。わたしはどうもこの人とは感性が合わないらしく…。

 

「ママがおばけになっちゃった!」も、今回の「あたしおかあさんだから」も子ども向けではないと感じる。絵本という形、幼児向け番組での歌という形をとった表現だけど、基本的にお母さん向け。お母さんに向かって「しんどい事も多いよね!でも"いいお母さん"でいるために、"可愛い我が子のために"頑張ろうねっ!エイエイオー!」って勝手にグイグイ押しつけちゃう感じ。ノーサンキュー。

こういった絵本を読んで、育児は大変だけど頑張ろう!、と自分を鼓舞したり、歌を聴いて子どもへの愛情を再確認すること自体は否定しないけれど、「おかあさんに(だけ)ひたすら犠牲を強いる」ようにしか見えないから気持ちが悪い。

 

お母さんだから、お母さんだもの、と自分を押し殺さなくたっていいじゃない。お母さんがライブに行ったって、好きな服買ったっていいじゃない。

「あなたのために、わたしは全てを捨てたのよ」と言われる子どもの身にもなって考えてほしい。相当恩着せがましい。わたしが自分の母親にこんな事を言われたら、きっと言ってしまうと思う。「知ったこっちゃないよ」と。

 

こんな歌詞の歌を、だいすけおにいさんに歌わせないで欲しい。だいすけおにいさんには、純粋に子どもの目線に立った歌、子どもが楽しめる歌を歌っていて欲しい。わざわざお母さんを号泣させようとしなくたっていいよ。 仕事、もう少し選んだ方がいいよ。

それこそ、知ったこっちゃないのかもしれないけれど。

 

※だいすけおにいさんの歌で泣きたい!という人は、ぜひ「ボヨヨン行進曲」を聴くことをお勧めします!ボヨヨンて!笑 と思うかもしれないけど、中身はとってもいい歌詞。元気の出る歌。自然と泣ける名曲です。